香港で露天商として営業するには、政府の許可(ライセンス)が必須です。ライセンスには「定位置露天商ライセンス(固定場所)」「流動露天商ライセンス(移動型)」「食品露天商ライセンス(食品販売)」があります。
1970年代以降、新規発行は制限されており、既存ライセンスの更新や譲渡が主な取得方法です。管理は**食品環境衛生署(FEHD)**が行い、食品衛生や公共安全基準の遵守が求められます。違反した場合、罰金や商品没収といった厳しい罰則が科されます。興味深いのは、こうした取り締まりの管轄が警察ではなく、食品環境衛生署であること。道路交通法に関係しない限り、彼らが違反を取り締まるのです。
昔はもっと無許可の露天商が多かったようで、FEHDの担当官が見回りに来ると、露天商同士で知らせ合い、重たい屋台を押しながら近くの路地に逃げ込む姿がよく見られました。今ではそうした光景は減りましたが、それでも香港の街角には、ライセンスの有無が曖昧な「流動露天商」が存在しています。
売られているものも多種多様です。よく見かけるのはスマホ関連のプロテクター貼りやケース販売、さらに女性向けの下着やスパッツ、冬ならマフラー、夏ならハンドタオルと、まるで移動型の万屋集団のよう。資金がうまく回れば、仕入れて売り、売れたらまた仕入れるという、独自の経済圏が成り立っているのです。
そんな香港で驚いたのが、横断歩道の真横で営業していた露店!「大胆な場所で営業するな!」と驚きつつも、その光景は妙に街に溶け込んでいるな、と感じました。香港の露店文化は、混沌とした中にも独特の秩序があるようで、興味が尽きません。