全クリエイター時代の広告会社(撮影見学後記①)

  (部屋に入る前のエアシャワー) ※English version will be released in a few days こんにちは。TYA(HK)LimitedでインターンをさせていただいているKです。先日CMの撮影を見学する機会がありました。全2回にわたって記事をお送りします。 撮影見学が貴重な経験だったのはもちろんですが、広告のクリエイティブが実際に出来ていく過程の大変さを実感しました。これまで撮影機材や映像編集など、広告のビジュアル面に興味があったのですが、メッセージを込めて関係者の誰が見ても納得の行く完成度に持っていく、ソフト面に注目するべきだと今までに増して感じました。   今回の経験は、簡単に誰でも(それこそクライアントさんが自前でも)クリエイティブを制作できるいま、広告代理店の仕事はどうなるのだろうかと思っていた私の印象を180度変えました。私のインサイトを3点紹介します。   広告代理店の目 (カメラが映している映像を確認できるモニター)  現場には、CMの商品を販売しているクライアントさん、カメラや照明をセッティングし、制作面を担うプロダクションさん、出演する役者さんと事務所の方、そして広告をストーリーやコピーを含めて全体的にデザインしている広告代理店(TYA)がいて、クリエイティブをよりよいものにするために相談を重ねていました。    一つの映像を作るのにこんなにたくさんの人の目線が入っているのか、というのがまず最初の驚きでした。実写映像では、画面の明るさ、カメラのフォーカスの加減、役者さんのビジュアル、演技、字幕との兼ね合い、商品のアピールが出来ているか、自然な画面構成か、とクオリティを上げられる観点が無限にあります。制作のプロフェッショナルであるプロダクションさんとお仕事をするにあたり、広告代理店側はどの観点に着目してCM制作に携わるのか、という疑問を抱きました。    まず広告代理店は、広告の戦略を考えます。消費者の商品に対する印象、魅力を感じる点、求めるものなど商品のベンチマークリサーチ、CMのストーリーのデザインをクライアントさんと相談を何回も重ねながら行います。どんな役者さんがどんな動きをするのかをはじめCM全体をデザインしたTYAは、映像のクオリティを支えるプロダクションさんとは注目する点が違います。    疑問への答えとして、TYAは、広告代理店として「メッセージが伝わるか」への責任を負っているというのが私の今のところの考えです。クライアントから依頼を受け、話し合いを重ねているのはTYAであり、商品についてリサーチ・分析して消費者に伝えるメッセージに昇華させる肝心かなめのプロセスを担っています。    もちろん気になったところがあれば幅広くプロダクションさんに声をかける、というのがTYAのCM制作への関わり方です。ただ、クライアントさんとともにCM制作に終始関わる主体として、「伝わる」クリエイティブができているかに焦点があると感じました。     全体を見る仕事で (機材の調整をしている様子)     見学に参加させていただいて初めて、TYAでプロジェクトマネージャーという役職があることを知りました。商品のリサーチから構想、クライアントさんとの相談、撮影、編集などを含んだスケジュール作成まで、すべてを統括する役職です。たくさんの会社からたくさんの人が関わる仕事を、取りまとめることはけして容易くありません。    プロジェクトマネージャーがおっしゃっていたことで印象的なのは、「常にイメージトレーニングを欠かさない」ということです。特に撮影の現場では、天候の急激な変化や技術的なトラブルなど臨機応変に対応しなければならないことにあふれています。しかし与えられた時間内に、一定の完成度のCMを完成させなければいけないことには変わりありません。    刻一刻と変化する現場の状況と、変わることのないクライアントの希望に応えることの間を保っているのは、プロジェクトマネージャーの想像力であると考えています。私も、自分の経験や他の人から得た学びを通じて問題を事前に想像して、対応策を練っておけるようになりたいと強く思います。   プロとアマチュア (クレーンで照明機材の高さを調整する様子)    有難いことに、私には大学で他の団体さんがPRをする映像を制作させていただく経験がありました。団体さんが各シーンの概要を指定し、どんな構成にしてほしいかを具体的に注文してくださったとしても、それに沿うだけでなく団体さんの伝えたいことを考え、映像に気持ちをのせることを意識していました。    私が大学で経験した映像制作はいわばプロダクションの側面が強く、今回のCM撮影とは毛色が違います。しかし、今回の見学を通して、プロから学べることは多くありました。    一番有用な学びは、商品のある側面に注目してそれにリソースを集中することです。一つの商品に消費者に手に取ってもらえる理由はたくさんありますが、少ない時間で効果的に表現するには、そのうち一つに着目してそのためのストーリーを構成する必要があります。さらにクライアントさんと話し合いながら、クライアントさんが喜ぶだけでなく実際に売上に寄与する広告を打ち出します。    今までのことを思い返してみれば、自分が団体さんを応援する気持ちが大きいからこそ、たくさんの側面に注目してしまいがちでした。そうすると伝わりやすい映像を作ることに難儀してしまうことが多くありました。    プロダクション、または広告を見る消費者とクライアントの間という特殊な位置にある広告代理店で、クライアントには第三者目線から見た商品のアピールポイントとそれを伝えるメッセージを提供し、消費者に向けては伝わりやすい広告を送り出すところにプロフェッショナリズムを感じました。   まとめ    これらのインサイトを経ていえることは、クライアントと消費者の間の貴重な位置である点で、映像・静止画制作がたくさんの人に親しまれているいまでも、広告代理店という立場はたしかに必要であるということです。    TYAさんでインターンをさせていただいて1か月以上が経ちました。日本とは文化が違う香港で、さらに今まで広告を受信する側だった広告について発信する側の会社で経験を積ませていただいていることに感謝しながら、自分なりに丁寧に学びを得ていきたいと思います。   ここまでお読みいただきありがとうございました。広告会社の価値という観点で撮影の裏側をお伝えしましたが、次回は撮影技術に注目した記事をお送りします。

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