🔄 ボタンは何故かけ違う?②マーケの種62

― 短期広告と長期ブランディングのあいだで

前回取り上げた、大手メーカーとのSNS施策に関する事例。 派手な広告キャンペーンが最終的に選ばれたことで、私たちが提案した中長期的なブランディング戦略は採用されませんでした

この出来事は、単に施策の優劣というよりも、「何をもってブランディングとするのか?」という視点のズレが、意思決定の根本にあったことを物語っています。


「成果バイアス」が生む判断の歪み

短期的な成果を求めること自体は、経営として当然の姿勢です。しかし、今回のように広告的な即効性ばかりが重視されると、本来時間をかけて育てるべきブランドの価値が置き去りにされてしまいます。

このような判断の背景には、**経営層の「知見の偏り」や「過去の成功体験に基づくバイアス」**があると感じました。

かつてはマスメディアで話題をつくり、購買へとつなげる流れが王道だったかもしれません。しかし今は、ユーザーがブランドに接する接点が複雑になり、信頼や共感を軸にした関係づくりがますます重要になっています。

それでもなお、「広告=ブランディング」の図式で物事をとらえてしまうと、長期的な視野を持つ判断が後回しになってしまうのです。


バランスを取るには、文化の変革が要る

では、こうしたズレをどう乗り越えればいいのでしょうか?

答えの一つは、企業文化そのものの見直しにあると考えます。短期的な広告と中長期のブランド構築は、どちらか一方ではなく、両立させるべきもの。 そのためには、「ブランドは資産であり、時間とともに育てるものだ」という考え方を、組織の共通言語にしていく必要があります。

さらに、マーケティング部門だけでなく、経営層や営業部門など、横断的に“ブランドの定義”を共有する場が求められます。そこでは、目先のKPIだけでなく、“ブランドにとって何が正しいのか”という価値基準を持ち込む勇気も必要です。


みなさんの現場では、どうでしょうか?

このような「ボタンのかけ違い」は、どの現場でも起こり得ることです。 だからこそ、最初の認識合わせを丁寧に行うこと、そしてズレに気づいたときに対話できる土壌を育てておくことが大切です。

みなさんのチームでは、短期と長期のバランス、どのように取っていますか?経営層との温度差を感じたとき、どのように歩み寄っていますか?

次回は、別の事例を通して、「ズレ」が生まれる構造について、もう少し具体的に掘り下げてみたいと思います。(続)