
コーヒーが好きです。香港でも、最近は本当にカフェが増えました。新しいお店ができては話題になり、エスプレッソやハンドドリップを出す店も珍しくありません。場所によっては、10メートルおきにカフェがあるんじゃないかと思うくらいです。
けれど、10年、15年前を思い出すと、そんな風景はまだありませんでした。あったとしても、スターバックスがちらほら。今のような“カフェ文化”が根づく前、コーヒーといえば、茶餐廳(チャーチャンテン)のミルクコーヒーが定番でした。
写真のそれは、インスタントコーヒーにたっぷりのエバミルクを加えたもの。苦味よりもミルクのまろやかさが勝っていて、でもしっかりとコーヒーの香りも立っています。マグカップか、白いカップ&ソーサーで出てくることが多く、スプーンでかき混ぜると、ほんのりと湯気が立ちのぼります。気取っていないけれど、妙に落ち着く味です。
当時も、特別なものではなかったはずですが、今になってみると、あれはあれで確かな“ごほうび”だったのだと思います。朝の定食と一緒に、あるいは午後の休憩に。ひと息つくタイミングには、よくこのミルクコーヒーを頼んでいました。
今でもふと、無性に飲みたくなる瞬間があります。きれいなラテアートや酸味の効いたシングルオリジンも好きですが、茶餐廳のあの味には、また別の安心感があります。カフェのコーヒーとはまったく別のジャンルで、比べるものではないのかもしれません。
このミルクコーヒーに勝てるのは、同じく茶餐廳で出てくるリプトンのティーバッグを使ったホットミルクティーくらいでしょうか。どちらも、今も昔も、変わらずそこにある味です。 ■香港図鑑いかがでしたか?香港でのマーケティングインサイト調査もTYAにお任せください