【マーケの種28】複数のCM視聴より1回のイベント体験が心に残ることもある

若者に人気の飲食料ブランドの年間キャンペーン をお手伝いした際、改めて**「広告では届かないものもある」** ということを痛感しました。このブランドはCMの完成度が高く、調査でもクリエイティブが売上に貢献しているのは明らか で、私たちもご縁をいただけたことに感謝していました。しかし、ある出来事をきっかけに、マーケティングの本質は広告だけではない ということを強く実感したのです。

そのきっかけは、同社が主催したランニングイベント でした。ブランドが自ら企画・演出し、親子やカップル、年配の方々など幅広い層の参加者が競技やアトラクションを楽しんでいました。私たちは、その場にいる人々が心から笑い、夢中になっている姿を目の当たりにしました。何十回ものCM視聴では決して得られない「心に残る体験」 がそこにはありました。

体験がブランドの記憶を形作る

このイベントに参加した人たちは、単に楽しい時間を過ごしただけではありません。「ブランドとともに過ごした時間」 が記憶に強く刻まれていたように思います。商品を手に取ったとき、あの日の楽しい思い出が蘇る。そうした感情的なつながり が生まれることこそ、広告やメディアを通じた訴求とは異なる、まったく別の次元でブランドとの絆を深める力があるのだと実感しました。

さらに印象的だったのは、このイベントが単なる協賛ではなく、ブランド自身が企画・演出を手がけていた という点です。企業が自らの価値観や世界観を直接表現する場を作ることで、消費者との関係はより深まります。「このブランドの考え方が好き」「このブランドの世界観に共感できる」 という感情が生まれることで、単なる商品購入以上の意味を持つようになるのです。

ブランドは一日にして成らず – 多角的なアプローチの重要性

マーケティングにおいて、広告だけでなく、CM、SNS、イベントといった各タッチポイントが持つ役割を相互に補完し合うこと が重要です。消費者との接点を広げながら、一貫したメッセージを届けることが、ブランドの価値を積み上げていくのです。

時には、15回の広告視聴よりも、1回のリアルな体験が消費者の心に深く刻まれる ことがあります。ブランドにとって、そうした**「記憶に残る瞬間」** を作り出すことこそ、長期的な成功につながるのではないでしょうか。