本来であれば、映像素材と写真素材の撮影は別々に行うのが理想的です。映像は動きや音を含めたストーリー性が求められ、写真は一瞬の美しさやインパクトが重要になるため、それぞれに最適なライティングや撮影環境が必要になります。しかし、予算やスケジュールの都合から、同じスタジオで同時に撮影するケースも少なくありません。そのため、事前の準備やチームの連携が極めて重要になってきます。
撮影準備:ビジョンを共有するプロセス
撮影の大枠が決定したら、次にカメラマンやスタイリストとの打ち合わせを行います。ここでは、ブランドや商品の特徴をどう表現するのか、どんな雰囲気を目指すのかを細かく擦り合わせます。色味や照明の使い方、タレントやモデルの表情、服装、背景など、すべてが一つのビジュアルとして完成するように調整していきます。
具体的な撮影イメージが固まったら、ライティングのテスト撮影を実施します。実際の撮影に入る前に、光の当たり方や影の出方を確認し、必要に応じて調整を行う工程です。テスト撮影は、スタッフやテスト用のモデルを使って行われることが多く、本番に向けた微調整の時間でもあります。ライティングが決まることで、写真の雰囲気や映像のトーンが確定し、より洗練されたビジュアルへと仕上げることができます。
本番撮影:タレントとの連携とリアルタイムチェック
準備が整ったら、いよいよタレントやモデルとの撮影に入ります。ここでは、事前に決めたコンセプトを踏襲しつつも、タレントの個性や自然な表情を引き出すことが求められます。撮影中は、カメラマンがリズムよくシャッターを切り、MacBookにリアルタイムで画像が送られます。
その場でカメラマンやディレクターが画面をチェックし、必要に応じてポージングやアングルを修正。クライアントとも確認を取りながら、細部までこだわり抜いて撮影を進めていきます。
撮影後の工程:リタッチと最終仕上げ
撮影が終わったら、後日、撮影素材の中からベストなカットを選びます。数百枚、場合によっては千枚以上の写真の中から、ブランドのイメージに最も合うものを数枚ピックアップしていく作業は、意外と時間がかかるものです。この選ばれた写真は、リタッチ作業に入ります。
リタッチでは、肌のトーンを整えたり、背景の微調整をしたり、細かい部分まで仕上げを行います。最終的に完成したビジュアルは、広告やWebサイト、ポスターなど、さまざまな形で展開され、多くの人の目に触れることになります。
まとめ:キービジュアル作りの面白さ
キービジュアルの制作は、単なる写真撮影ではなく、ブランドのメッセージを視覚的に伝える重要なプロセスです。事前の準備から撮影、リタッチに至るまで、細かい調整の積み重ねが、美しく印象的なビジュアルを生み出します。
予算やスケジュールの制約がある中でも、工夫を凝らし、チーム一丸となって作り上げることで、ブランドの世界観を最大限に引き出すことができます。こうしたプロセスを知ることで、普段目にする広告やビジュアルにも、また違った視点で注目できるかもしれません。