【マーケの種35】価格と品揃えについて(1)— サイズの選択肢はなぜ違うのか?

日本では、商品サイズのバリエーションが豊富に揃っていることが当たり前のように感じられます。例えば、缶ビールなら350mlと500mlがあり、さらに一口で飲みきれるミニサイズも存在します。ヘアワックスも同様で、自宅でじっくり使うための大容量サイズと、外出先での持ち運びに便利な小型サイズが、コンビニやドラッグストアで容易に手に入ります。

このようなサイズ展開が実現しているのは、ブランドがユーザーの使い方を細かく想定し、それぞれのケースに最適な選択肢を提供しようと考えているからです。そして、小売店側もその考えに共感し、異なるニーズに応じた品揃えを行っています。

例えば、ビールの場合、「ちょっと飲みたいだけなのに500mlでは多すぎる」と感じる人が一定数いるでしょう。一方で、「しっかり飲みたいから500mlがいい」という人もいます。ヘアワックスなら、「大きなサイズは経済的だけれど、カバンに入れて持ち歩くには不便」と考える人もいれば、「自宅用と携帯用で使い分けたい」と思う人もいるはずです。こうした多様なニーズに応えるために、日本の市場では細かいサイズ展開が当たり前になっているのです。

しかし、香港では事情が異なる

香港では、こうした考え方はあまり浸透していません。メーカーも小売店も、限られた棚のスペースを最大限に活用することを優先しているため、小さなサイズの商品を多く揃えるよりも、一つひとつの単価が高い大きめのサイズを揃える傾向があります。

理由は単純で、小さいサイズの商品を多く扱っても、利益が出にくいからです。日本のように「さまざまなニーズに対応する」という考え方よりも、「いかに効率よく売れるか、儲かるか」を重視した品揃えになっています。そのため、ビールなら500mlや1Lサイズが主流で、小さいサイズはほとんど見かけません。ヘアワックスも、大きいサイズが主流となり、持ち運び向けの小型サイズはあまり売られていません。

この違いは、消費者のニーズというよりも、小売店のビジネスモデルの違いから生じているのです。では、このような品揃えの違いが消費者にどのような影響を与えているのでしょうか?また、日本のような多様なサイズ展開が香港で浸透する可能性はあるのでしょうか?

次回の記事で、さらに詳しく考えてみます。(続)