【香港図鑑41】ビルの中の教会

香港には、約100万人もの人が、総数500以上の教会に所属していると言われています。これは、およそ7人に1人が何らかの形で教会とつながりを持っている計算になります。この数字を聞くと、意外に思う方も多いかもしれません。特に、日本の都市部ではキリスト教徒の割合が比較的少ないため、香港のように信者の多い都市という印象はあまりないかもしれません。しかし、香港の街を歩くと、確かに至るところに教会が存在していることに気づきます。

興味深いのは、そのうち教派に属する教会が約70ほどで、残りの大多数が独立系の教会である点です。プロテスタント、カトリック、福音派など、多様な宗派が存在する一方で、香港では独立した小規模な教会も数多く活動しています。これは、香港の自由な宗教文化や、多様なバックグラウンドを持つ人々が集まる都市ならではの特徴とも言えるでしょう。

ビルの中にある教会という文化

この写真の教会は、普通の建物の中にあるものとしては比較的大きい方ですが、香港ではマンションの一室を教会として使用しているケースも珍しくありません。高層ビルの中、オフィスの一角、あるいは住宅街の一室など、さまざまな場所で礼拝が行われています。

特に、商業施設の中に教会があることもあり、初めて訪れる人にとっては驚きの光景かもしれません。外観からは普通のオフィスに見える建物でも、エレベーターで上階へ上がると、礼拝の歌声が聞こえてくるといったこともあります。

また、教会の存在を示すのは、窓に掲げられた小さなサインのみというケースも多く、気をつけて見なければ気づかないほど控えめなものもあります。日本のように、独立した教会堂が広い敷地に建てられているケースはむしろ少数派であり、限られたスペースを有効に活用しながら、信仰の場を確保しているのが特徴です。

文化的な違いに驚いた瞬間

日本にいる時、教会といえば独立した建物を思い浮かべていました。ヨーロッパの大聖堂のようなものから、街角にある小さな礼拝堂まで、基本的には建物としての存在感があるものだと思っていたのです。しかし、香港でこうした「ビルの中の教会」を目にしたとき、最初は少し驚きました。

しかし、よく考えてみると、これは香港の土地事情都市構造と密接に関係しています。香港は世界でも有数の人口密度を誇る都市であり、限られたスペースの中で効率的に施設を運営する必要があります。そのため、宗教施設もまた、オフィスビルや商業ビルの中に組み込まれる形で存在しているのです。

また、こうした形式の教会は、アクセスのしやすさという点でも利点があります。オフィス街にある教会なら、仕事帰りに立ち寄ることができ、住宅街の一角にある教会なら、近隣の住民が気軽に通うことができます。信仰を日常生活の延長として捉える文化が、こうした教会の形態を生み出しているのかもしれません。

香港の教会文化の奥深さ

香港の教会文化を知ることで、この都市が持つ多様性や柔軟性を改めて感じることができます。ビルの一室であろうと、マンションの中であろうと、人々が集まり、祈りを捧げる場として機能していることに変わりはありません。

一見すると目立たないかもしれませんが、こうした都市の中に溶け込んだ信仰の場が、香港の人々の暮らしに深く根付いているのです。次に香港を訪れる際は、ぜひ街を歩きながら、窓の片隅に掲げられた小さな教会のサインを探してみてください。思いがけない場所で、静かに営まれている信仰の場に出会えるかもしれません。

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