【香港図鑑44】キラキラDQNレストラン

香港のレストラン(茶餐廳)は、すべからくこうでなければいけない。 ど派手なネオン、ギラギラの看板、謎の装飾。目がチカチカするほどの光の洪水の中で食べるバターたっぷりの菠蘿包(パイナップルバン)、これこそが香港の醍醐味だったのに、時代の流れというのは無情なものですね。

コロナを経て、翠華(Tsui Wah)がいくつも閉店し、キラキラDQN系の茶餐廳はすっかり影を潜めてしまいました。 かつては、街の至るところにあったこの圧倒的な騒がしさと熱量が、今ではめっきり減ってしまったのが寂しいところです。

香港の活力は茶餐廳にあり

こういうド派手な外観の店内に、地味なおじさまおばさま方が集まり、口角泡を飛ばしながら朝ごはん、ランチ、アフタヌーンティー、夕飯をかき込む――これが香港の活力の根源だったのではないか、と思います。 どこを見ても、新聞をめくる音、ガラスのコップがテーブルに置かれる音、店員の怒号、スプーンが皿に当たる音が響き渡る。茶餐廳とは、単なる飲食店ではなく、香港人のDNAに刻まれた生活のリズムそのものだったはずなのです。

香港からあちこちに移民していった人たちも、きっと夜な夜な茶餐廳の夢を見てうなされているに違いないんです。目を閉じれば、あの雑な接客、容赦なく叩きつけられるメニュー表、そして熱すぎる奶茶(香港式ミルクティー)**の味が蘇っているはずです。

僕の好きな茶餐廳メニュー

僕は、コーヒーと紅茶を混ぜた鴛鴦が好きです。 え?そんな飲み方あり?と思われがちなのですが、絶妙なバランスで調和がとれているんですよ。甘さと苦味、コーヒーの深みと紅茶の香りが混ざり合い、意外とクセになる味わいです。茶餐廳の雑然とした雰囲気の中で飲むと、うん、これだよな、とうなづいてしまいます。

最近は、オシャレなカフェやこぎれいなチェーン店が増えてきたのですが、それでは物足りない、やっぱり香港の茶餐廳は、キラキラDQNスタイルで、ちょっと圧の強い接客と、場違いなほど派手な内装であってほしい。 そうでなければ、あの独特の香港らしさは失われてしまう、と考えることしきりです。

まだ残っているキラキラDQN系の茶餐廳の存在を、できるだけ長く楽しみたいものです。いつかまた、街のあちこちにギラギラした看板がたくさん復活する日が来ますことを。

今日も鴛鴦は最強です。

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