【香港図鑑56】Ikigai

香港の書店ランキングで洋書として14位に入っている本のタイトルは「生きがい」。日本語由来の言葉がそのままタイトルになったこの本が、香港でも注目を集めていることに少し驚きつつも納得する部分があります。本のレビューには次のような言葉が並んでいます。

「長寿で健康的、そして幸せな人生を送るための実践的なガイド。」(リズ・アール)

「自分に喜びをもたらすことを追求しながら、生活をシンプルにするよう促してくれる本。」(近藤麻理恵)

「読んでから心を掴まれ、今もその魅力に囚われ続けている。」(クリス・エヴァンス)

このような賛辞を受ける背景には、現代の急激に変化する社会に対する不安があるのではないでしょうか。テクノロジーの進化やグローバル化の波は、私たちの生活を便利にする一方で、競争社会の中で押しつぶされそうになる感覚を抱く人も少なくありません。特にこれから社会を担っていくZ世代は、80%が将来に対する不安を持っているという統計もあるそうです。この数字は、若い世代がいかに現代社会のプレッシャーを感じているかを物語っています。

こうした状況の中で、「生きがい」という概念が注目されるのは非常に自然なことです。生きがいは日本文化の中で大切にされてきた考え方で、自分に喜びや充足感をもたらす活動や目標を見つけ、それを追求することを指します。この考え方は、ただ快楽に溺れるだけの短期的な満足感とは異なり、長期的なウェルネスや幸せを重視する点で、現代において非常に価値があるように思えます。

実際、生きがいを見つけることは幸せな人生を送る上で重要な鍵となるでしょう。それは、ただの趣味や仕事を超えたものであり、自分の存在意義や人生の目的と深く結びついています。こうした感覚を持つことができれば、たとえ社会の変化やプレッシャーに直面しても、自分の軸を保ちながら生きることができるのではないでしょうか。

「生きがい」をテーマにした本が香港で売れているのは、単なる自己啓発ブームではなく、多くの人が内面的な幸せや安定を求めている証拠なのかもしれません。この本が提示する考え方が、読者一人ひとりの心に響き、より良い人生のヒントを提供しているとすれば、非常に価値のある一冊だと言えるでしょう。