
清水湾電影製片廠(銀都清水湾映画撮影所)が解体されることになりました。
香港映画の黄金期を支えた伝説のスタジオのひとつで、多くの名作がここから生まれました。僕も映画ではないですが、CMの撮影で何度も通った場所です。
建物の中は、少し古くて、暗くて、湿気っぽかった。でも、クーラーだけやたら効いていて、カーディガン必須だったんです。機材はどこか年季が入っていて、床には細かなホコリ。それでも、あの空間には独特の緊張感と、ちょっとした高揚感がありました。
撮影の合間に食べる、スタジオ裏のケータリング弁当。何の変哲もないローカル飯なんだけど、あの空気の中で食べると、なぜかとても美味しかったです。ぎゅうぎゅう詰めのスケジュールの中、ほんの少し気が抜ける、貴重な時間でした。
昨年は、Joey Yung(容祖兒)さんやMirrorのEdan Lui(呂爵安)さんとご一緒した撮影もここで行いました。そんな思い出の場所が、もうなくなってしまうのかと思うと、やっぱり寂しいです。
映像制作の技術やニーズが変わった今、あのスタジオのままでは追いつけないという判断だったのでしょう。でももし、アートやデジタル分野への転換支援のような制度が活かされれば、あの場所が別のかたちで再生する可能性も、まだあるのかもしれません。
錆びた手すりや、軋むドアの音、冷たい空気。全部ひっくるめて、僕にとっては、大切な記憶のひとつです。もちろん、同じ業界の人々たちにとっても。
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