
― 世代交代の壁と“変わらない”という選択
(承前)
今回取り上げるのは、**ある化粧品メーカーが直面した“ズレ”**に関するお話です。長年にわたり安定したファンを持ち、業界内でもブランドとしての信頼感は厚い企業。
ところが現在、主要なユーザー層は50代以上へと移行し、若い世代からは「お母さん世代のブランド」と見られるようになっていました。まさに、ブランドの世代交代にどう向き合うかが問われる局面でした。
🧴 若年層へのアプローチは“否決”された
私たちは、次の世代のユーザーと接点を持つために、
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若年層向けの商品ラインの開発
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新しい販売チャネル(ECやセレクトショップなど)の活用
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SNSや動画プラットフォームを活かした、異なるトーンのコミュニケーション
といった施策を提案しました。
しかし、最終的に採択されたのは、現状維持という選択肢。
社内には「今の顧客を大切にすべき」「若年層は競合が多すぎる」といった声もあり、未来のユーザーを育てるための投資は、先送りされることになったのです。🛑 保守的な選択がもたらす停滞
この事例は、リスク回避が変化への挑戦を妨げた典型例だと感じています。 もちろん、既存顧客を大切にすることに異論はありません。むしろブランドの信頼は、そうした長年の積み重ねによって築かれてきたものです。
しかし、ブランドは“時間”とともに語られる存在でもあります。未来の顧客との関係性を築くことを怠れば、10年後には選ばれないブランドになってしまう可能性もあるのです。
🔄 変えることは壊すことではない
「変化」はしばしば、「今あるものを壊す」ものとして誤解されがちです。 けれど、ここで必要なのは**“壊す”ではなく“重ねる”という発想です。
今のブランド資産を守りながら、新しい価値や接点を積み上げていく**ことができれば、ブランドは複層的な魅力を持ち、複数の世代に共鳴する存在になり得ます。そのためには、“今の顧客”と“未来の顧客”の両方を見据えた意思決定が不可欠です。
🗣 あなたのブランドは、未来を見ていますか?
このような“ズレ”は、どの業界・どのブランドにも起こり得るものです。 あなたのブランドでは、次の世代との関係構築をどう考えていますか? 社内では、変化に対する対話ができていますか?
次回は、このような選択が中長期的にブランドにもたらす影響、そして、“世代交代”という壁をどう乗り越えるかのヒントについて、さらに掘り下げてみたいと思います。(続)