
コーズウェイベイのある交差点を通るたび、視線の先にいつもの2匹がいる。リードをつけたパグが2頭、飼い主の足元でじっとしていたり、ゆっくりと歩いていたり。周囲には自然と人だかりができる。写真を撮る人、なでようと手を伸ばす人、ただ見てほほえむ人。とくに犬好きでなくても、なんとなく目が行ってしまう存在感がある。
パグは中国が原産の犬種で、広東語では「覇歌(パーゴー)」と呼ばれる。音の響きも面白いが、意味は「いびきをかく王様」。なるほど、つぶれた鼻と堂々とした佇まいを見ると、そう呼ばれるのもわかる気がする。でも、暑さや寒さにあまり強くない犬種らしい。湿度の高い香港の街なか、それも人混みのなかで長時間過ごすのは、けっこう負担もあるのでは……と、少し気になってしまう。
それでも2匹は、今日もこの街角で、堂々と、飄々と、存在している。靴を履いていることもあれば、リュックに入れられてちょこんと顔を出していることもある。記念撮影のように並んで座っているときもあるし、完全に寝てしまっている日もある。見るたびに少しずつ違う表情を見せてくれる。
SNSで写真を見かけることも多く、たぶんいろんな国の人のスマホにこの2匹の姿が残っている。小紅書で見たという人もいれば、たまたま通りかかって撮ったという人もいる。観光スポットというわけではないけれど、気がつけばこの街の風景の一部になっている。
犬たちは何も語らない。ただそこにいるだけなのに、人々の足を止める。 それだけで、たぶん十分なのだろう。
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