【マーケの種36】価格と品揃えについて(2)

(前回の続き)香港では、ビールやヘアジェルといった商品のサイズの選択肢がほとんどないのが一般的です。なぜでしょうか?

その理由の一つは、小売店の影響力が非常に強いことにあります。香港では流通経路が限られており、7-ElevenやManningsといった大手小売チェーンが市場を寡占しています。そのため、メーカーが商品を店舗に置いてもらうための競争が激しく、日本以上に棚スペースの確保が困難なのが現状です。

小売主導の市場構造

日本では、コンビニやドラッグストア、スーパーマーケットなど、多様な販売チャネルが存在し、メーカー側も戦略的に異なるサイズの商品を展開する余地があります。しかし、香港では限られた店舗スペースの中で売上効率を最大化することが求められるため、小さなサイズを展開するよりも、単価の高い大容量の商品が優先的に採用される傾向があります。

つまり、日本のように「消費者の細かいニーズに応える」という視点よりも、「売上の見込める商品を厳選して並べる」という考え方が強く反映されているのです。この違いを理解せずに日本と同じ戦略で進出しようとすると、思うように結果が出ない可能性があります。

消費者の意識の違いも影響

もちろん、それだけが理由ではありません。香港の消費者は、ビールやヘアワックスといった商品に対して、それほど多様なサイズを求めていない可能性も考えられます。

たとえば、サイズの選択肢がほとんどない環境で長年過ごしていれば、それが当たり前になり、特に不便を感じなくなることもあり得ます。むしろ、**「大きい方がお得」**と考える消費者も一定数いるかもしれません。

日本では「用途やシーンに応じたサイズ選び」が重視される傾向がありますが、香港では「コストパフォーマンスの高さ」や「購入頻度を減らす効率性」が重視される場面が多いのかもしれません。このように、市場の構造だけでなく、消費者の意識や購買行動もサイズ展開に影響を及ぼしていると考えられます。

海外市場を目指す企業への視点

近年、日本市場だけでなく、アジアや海外へ販路を広げたいと考える企業や事業主は増えています。しかし、単に「海外で売る」という発想ではなく、それぞれの市場特性を深く理解し、適切な戦略を立てることが不可欠です。

香港のような小売主導の市場では、メーカーが直接消費者にアプローチするのではなく、小売との関係構築が重要になります。限られた棚スペースをどう確保し、どの商品をどう配置するかを考え、戦術に落とし込む必要があります。

また、消費者の意識や購買習慣を理解することも重要です。香港の市場では、「サイズバリエーションの豊富さ」よりも「コストパフォーマンス」や「効率性」が重視される傾向があるため、日本の感覚そのままで展開するとズレが生じる可能性があります。

これから海外市場を狙う企業にとって、こうした視点は非常に重要です。ぜひ、様々な観点から市場を分析し、効果的な戦略を立てていただきたいと思います。(了)