【マーケの種125:安くて「本当に良いもの」は可能か?③】

スーパーマーケットの棚に並ぶ商品を真剣な表情で比較検討する消費者と、その背景にあるサプライチェーンの繋がりをイメージした写真

バイヤーと消費者、どちらが「安さの質」を決めているのか?


🛒「安くて良い」に潜むもう一つのプレイヤー:バイヤーの存在

これまでの2回で、安さの裏にある搾取や環境負荷、そして技術革新による希望の兆しを見てきました。

今回はさらに一歩進んで、

「安くて良いもの」を市場に送り出しているのは誰なのか? という視点から掘り下げてみたいと思います。

そのカギを握るのが――**バイヤー(企業の仕入れ担当者)**です。


💼バイヤーの力は想像以上に強い

多くの大手小売チェーンでは、バイヤーがサプライヤーとの価格交渉を主導しています。 彼らの役割は、商品の品質を確認しつつ、**「いかに安く仕入れるか」**を追求すること。

その結果:

  • 価格競争が激化

  • 納期短縮のプレッシャー

  • 品質よりコスト重視の傾向

たとえば、欧州の調査によると、

小売業バイヤーの約62%が「価格が最優先の評価基準」と回答(European Commission, 2021)

つまり、価格交渉の現場では、倫理や環境配慮が後回しにされがちなのです。


🧱その圧力は、どこに向かうのか?

「もっと安く」「もっと早く」という要求が突きつけられるたび、 サプライヤーはどこかでコストを削らなければなりません。

結果として:

  • 労働時間の延長や低賃金

  • 安全基準の緩和

  • 環境対策費の削減

つまり、バイヤーの交渉力が強いほど、サプライチェーンの末端にしわ寄せがいく構造になっているのです。

これは、特にグローバルサプライチェーンにおいて深刻で、 安さを支える“見えない負担”が積み重なる仕組みとも言えます。


🌿変化の兆し:エシカル消費という選択肢

しかし、近年の消費者行動にはポジティブな変化も見られます。 それが、**エシカル消費(倫理的消費)**の広がりです。

📊 たとえば:

  • 日本生活協同組合連合会の調査(2022)では、

約52%の消費者が「環境・社会に配慮した商品を選びたい」と回答

  • 欧州では、

フェアトレード商品の売上が10年で約2.5倍に拡大(Fairtrade International, 2021)

このように、価格だけでなく「どう作られたか」を重視する層が着実に増えているのです。

参考記事:日本生活協同組合 “エシカル消費に関する意識調査 結果発表’ 参考記事:フェアトレード “フェアトレード・インターナショナル年次レポート2023”

🧭バイヤーも変わり始めている

実は、消費者のこうした変化は、バイヤーの姿勢にも影響を与えています。

  • 環境配慮型商品の導入を重視する企業

  • 認証付き商品(FSC、Fairtrade、B Corpなど)を優先的に仕入れる動き

  • 透明性のあるサプライチェーンを構築しようとする試み

たとえば大手スーパーのイオンは、

2030年までにプライベートブランドのすべてをサステナブル素材に切り替える方針を発表

これは、消費者の支持が企業の仕入れ基準を変えている証拠とも言えます。

参考記事:イオン株式会社 イオン持続可能な調達原則”

📝まとめ:市場を動かすのは「価格」だけじゃない

  • バイヤーの交渉力が「安さ」のカギを握っている

  • その圧力が、サプライヤーや労働者に負担をかけている現実も

  • しかし、エシカル消費の拡大が、企業の方針を変えつつある

  • 安くて良いものは、「誰が選ぶか」でその意味が変わる


次回予告📣:「買う」ことは「投票」になる?——消費者の力とその可能性

次回の【マーケの種126】では、 いよいよ**「私たち一人ひとりの選択」が市場に与える影響**について掘り下げます。

  • なぜ買い物が「社会参加」になるのか?

  • 価格より価値を選ぶには、どんな視点が必要?

  • 「安くて良いもの」を支える、新しい消費行動とは?

どうぞお楽しみに😉✨ マーケの種シリーズ。こちらもいかがですか?→【マーケの種30】エージェンシー向けブリーフィング(1) – 情報共有の不備が生む課題

参考記事: