【マーケの種109】10分カット VS 上海理髪店②

理髪店で使われるヴィンテージのシェービングブラシ、カミソリ、バリカンなどの道具一式

〜なぜ「上海理髪店」は姿を消していったのか?〜

香港のあらゆる街角、団地の側に必ずあった「上海理髪店」。 丁寧な接客、クラシックな椅子、シェービングにマッサージまで付いたフルサービス型の理髪文化は、多くの人にとって“癒しの時間”でもありました。

しかし―― 近年、その上海理髪店が急速に姿を消しているのです😢。

なぜ、かつての定番が姿を消しつつあるのでしょうか? その背景には、いくつかの大きな社会的・文化的な変化があります。


✅ 1. 後継者不足という現実 🧓➡👶

上海理髪店を支えてきたのは、熟練の技を持つ職人たち。 しかし現在、その多くが高齢化しています。

一方、若い世代はというと…

  • 進学率の上昇

  • 職業観の多様化

  • 親の跡を継ぐことへの心理的ハードル

といった理由から、理髪業を継ぐ人が激減しました。

長く続く老舗も、「子どもが継がないから」と惜しまれつつ閉店…。 **“技術はあっても継ぐ人がいない”**という典型的な後継者難が、静かに業界を蝕んでいるのです。


✅ 2. 変化したライフスタイルと時間感覚 ⏳💼

現代人の1日は、とにかく忙しい! 仕事、家事、育児、SNS、通勤… その中で「髪を切る時間」は、**“できるだけ短く・手軽に”**が求められるようになりました。

上海理髪店のような、

  • 洗髪

  • 顔剃り

  • マッサージ

  • お茶のサービス

…といった「ゆったりとした時間」は、**“ぜいたく”で“非効率”**と受け取られるように。

「時間をかけて丁寧に」は、かつての強みでしたが、 今では「時間がかかって面倒」と敬遠される要因になってしまったのです。


✅ 3. “10分カット”という強敵の登場 💨✂️

日本では1996年に登場した「QBハウス」は、 **「10分・1,200円」**という明快なコンセプトで、理髪業界を大きく揺さぶりました。

現在では、国内外に**700店舗以上(2024年時点)**を展開し、 “余計なサービスを省いた合理性”が支持されています。

利用者の中には、

「シャンプーも顔剃りもいらない。とにかく早く済ませたい」 「美容室は気後れするけど、QBなら気軽に入れる」

という声も多く、**“最低限でOK層”**が明確に存在していることがうかがえます。

このような新業態の台頭により、 「理容=フルサービス」の価値観は、次第にマイノリティ化していったのです。


🔍 まとめ:時代の波に飲まれた“丁寧さ”のジレンマ

上海理髪店の衰退は、単なる業界トレンドではなく、 社会全体の価値観と生活スタイルの変化を映し出す鏡でもあります。

  • 職人文化 → キャリアの多様化へ

  • 丁寧な時間 → スピードと効率重視へ

  • フルサービス → ミニマムサービスへ

つまり、“かつての強み”が、今では逆風になっているという構造なのです。 (続きます) シリーズ前回のマーケの種102:TPOとマーケティングの関係①はこちらから