街の信号は短い――。ふたりは手をつなぎ、息を合わせるように小走りで横断歩道を渡る。向こう側に見えるのは、時の流れを感じさせる四階建ての古びたビル。窓枠の塗装は剥がれ落ち、外壁には何層にも重なったコンサートのポスター。風に揺れる剥がれかけた紙が、擦れ合いながら微かな音を立てる。
信号が赤に変わり、カチカチと響く警告音。ふたりが渡り終えた横断歩道には、すぐに車のエンジン音が押し寄せる。その音は街の喧騒に溶け込み、何事もなかったかのように日常を再開させる。
ビルの壁際に立つ古い街灯が、ふたりの姿を淡く照らす。坂道を並んで歩くその背中は、信号の向こう側にいる私たちにとって、まるで映画のワンシーンのように見える。振り返ることなく、ただ前を向いて歩き続けるふたりの足音だけが、静かに街に溶けていく。
香港の街角――何気ない瞬間にも、小さな物語がそっと息づいている。
■参考記事:Trip .com ■香港図鑑いかがでしたか?香港でのマーケティングインサイト調査もTYAにお任せください。 ■シリーズのこちらの記事もぜひお読みください→【香港図鑑66:街角の温もり、針金ハンガー】


