【マーケの種154:北上消費と“すれ違う”香港②】

赤い輪ゴムで固く縛られた丸まった20ユーロ紙幣

「財布を閉じる観光客たち」

香港に来る観光客のスタイルが、明らかに変わってきています。数年前まで旺角や尖沙咀で見られたような“爆買い”の姿はすっかり影を潜め、代わりに目立つのはスマホを片手に街を歩く、軽やかな旅行者たち。彼らの目的は、**買うことより「どこでどう過ごすか」**にシフトしています。

📱 「買う」から「撮る」へ。

SNSで話題の店を巡り、フォトジェニックなカフェで写真を撮り、夜景やストリートフードを友人にシェアする——。彼らにとって旅行の“価値”は、消費よりも「体験を記録し、共感を得ること」にあるようです。

💬 実際、香港観光発展局のデータによれば、2024年上半期の訪港観光客の1人あたり消費額はコロナ前比で約−28%。その内訳を見ると、ショッピング支出の落ち込みが最も大きく、一方で飲食関連の支出は微増しています。これは明らかに「モノ消費→コト消費」への転換を示しています。

🏬 現場の声もそれを裏付けます。あるショッピングモールの店長は「人は戻ったけれど、手が動かない」と話します。通りを歩く人数は多いのに、購買につながらない。この“すれ違い”の感覚は、街のあちこちで聞こえてきます。

💡 “来るけれど、買わない”。

このギャップに、香港の商業構造はまだ追いつけていないのかもしれません。観光の「量」は戻っても、「質」が変わっている。その変化に、私たちのマーケティング思考がまだアップデートできていないということ。

観光が**「購買活動」から「文化体験」へ**と移行するなか、次に問われているのは、“何を売るか”ではなく“どんな時間を提供できるか”。財布を閉じた観光客たちは、実は香港に「新しい消費の形」を提示しているのかもしれません。(続)

■参考記事:Hong Kong Tourism Board “2024 Tourism Perfprmance” ■マーケの種シリーズ:こちらもいかがですか?→ボタンは何故かけ違う?②マーケの種62